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高峰秀子のサラダ

  • 執筆者の写真: Hiroko
    Hiroko
  • 2021年10月31日
  • 読了時間: 2分

更新日:2021年11月14日

執筆者:Hiroko


食事をともにすると、人となりがわかると言う。


口に運ぶスピードに咀嚼音、ナイフやフォークの使い方、食べるペース。

ウェイターへの態度、スマホを触るか否かもあるだろうか。


食事だけで人となりの大半が透けてしまうのなら、料理をつくるとなれば、人間そのものが出るに違いない。



私は料理をするのが好きだが、料理教室には通ったことがない。

揚げ物はからっきしダメで、いまだにコロッケも揚げられない。

料理が好きなのは食べるのが好きというより、気分転換になるから好き、といったほうが正しいかもしれない。


野菜を切り、肉を茹で、次はたまごを溶いて...頭を使うしに無心になれる。

料理をしている間は仕事の悩みやモヤモヤを少し忘れられる気がするのだ。


幾度もの断捨離をすり抜けて、8年以上手元に残っているレシピ本がある。

『高峰秀子のレシピ』という本だ。



あんたのための作ったんじゃないよ


昭和を代表する大女優の高峰秀子が、愛する夫、松山善三のために作り続けた家庭料理のレシピ集。

昭和57年に発刊された高峰のエッセイ『台所のオーケストラ』を底本としている。


当時の私はなぜこの本を手にとったのか忘れてしまったけど、レシピのあいだに書かれたエッセイからは高峰の松山への愛情がひしひしと感じられて、定期的に読み返すほど大好きな本になっていた。



「高峰の料理は、高峰秀子という人間に似ていた」

と、養女でライターの斎藤明美は語っている。そして、


「これはあんたのための作ったんじゃないよ。とうちゃんのために作ったのよ」

と、はっきり言う人だったらしい。


私とは正反対だ。


結婚をしてから気がついたのだが、私は料理を相手の誰かのために作ったことはほとんどない。どちらかといえば、今も自分のために作っている。


「眠たくなったから寝る」「さっぱりしたいからお風呂に入る」と同じように、「料理したくなったから料理をつくる」のだ。


松山はいつも出張や旅行から帰ってくると、「サラダ!サラダ!」と叫び、高峰の手作りドレッシング以外は口にしなかったらしい。

大好物を聞かれれば、たまご焼きと答えたとエッセイには書かれている。

シンプルな料理ほどうまい下手がわかれるし、性格もセンスも出る。


あと数年、夫のためにご飯を作り続けたら、

私は高峰秀子に少しは近ずくことができるだろうか。





新潮文庫『台所のオーケストラ』高峰秀子

ハースト婦人画報社『高峰秀子のレシピ』高峰秀子

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