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踏み込んだら修羅

  • 執筆者の写真: Hiroko
    Hiroko
  • 2022年10月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:2022年10月7日

執筆者:Hiroko


赤江爆の小説は麻薬のようだ、と以前も書いた。

麻薬のように常習性があり抜け出せなくなってしまう小説だからだ。


さらに付け加えるなら、”待てる小説”だ。

罠を張り巡らせ、読者が静かに落ちていくのをじっくりと待てる小説。


麻薬は一度手を出すと抜け出せないという。

一度手を出した者は、もう一度必ず手を出す。こうなるとやめられない。


中毒になってもいい、いっそ引き返せなくなるまで吸い尽くしてしまってほしい。

改めて、赤江爆の世界に落ちていこう。




死と同性愛


赤江爆といえば情念・魔性・歌舞伎・刀・若者・同性愛...象徴する言葉があるが、「死」がキーワードになっている作品が多い。


以前取り上げた『花夜叉殺し』は人を狂わす不思議な庭が舞台で、まさに麻薬のように3人を蝕んでいき正常な判断などできない状態にする。

亡くなった母が象徴的に現れ、最後に義理兄の庭師の篠治と女主人の曄江(あきえ)を手にかける。


主人公の青年一花は女主人の曄江(あきえ)とは一度も関係を持たないが、毎晩義理兄の篠治の肉体を曄江との情交の痕跡を求め貪る。主人公の情欲の対象はあくまで曄江というストーリー設定ではあるが、描写から感じるのは強烈なエロスでありタナトスだ。


『花曝れ首』は、男に裏切られた主人公の篠子が、妖として現れた2人の美青年に心を救われる話だ。

2人の妖の正体は江戸時代に1人の男を取り合った色子なのだが、”秋童”の顔には無数の傷がある。ここでも主人公の女性を助けるのは色子の妖であって、人間の愛や優しさではない。

赤江作品では、性行為のシーンは異性より同性の方が多く登場する。設定として女性が出てくる、という場合が圧倒的に多いのだ。赤江爆は、女性を世界の帳尻合わせとして登場させていたのかもしれない。



死と若者


10代の若者が主人公の小説も多い。若者が主人公の場合、色情的な要素はなくても死は常に潜んでいる。

特に『花帰りマックラ村』主人公の眉田英睦は17歳の若さで自ら死を選んだとしか思えないような事故で亡くなるが、死に魅了された生き方というか、死ぬために生まれてきたような透明感のある存在で描かれている。


若者は”死”や”死後の世界”に興味をもつ世代ではあるが、思春期ゆえの興味ではなく、自分は一体何者なのかを問い続け孤独を深めていく。


赤江爆の作品はいつも、万華鏡のように死や情念を散乱させて執拗に読者の向き合いたくない心の溝をえぐってくる。





参考元:

光文社文庫『花夜叉殺し』赤江瀑

河出書房新社『花曝れ首(赤江瀑の世界より)』赤江瀑

河出書房新社『花帰りマックラ村(赤江瀑の世界より)』赤江瀑

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